【試乗記】新型ロードスター(ND) 1日試乗
関東マツダのキャンペーンで、お好きな車を1日貸してくれるというキャンペーンがある。
某日、埼玉のとある店舗に空きを見つけ、予約をしたのだった・・・
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素晴らしい秋晴れの日に、電車を乗り継いで埼玉のマツダディーラーに佇む真っ赤なロードスターの元へ向かった。
簡単な手続きを済まし、ボタン式のエンジンスタートスイッチを押し、ロードスターのエンジンをかけると「ブォオン!」という、かなり演出の効いたエキゾースト・サウンドで1.5Lへとダウンサイジングされたエンジンが目覚める。
幌の開け方だけ教えてもらい、屋根を開け放ち、クラッチを踏み、ギアを1速へ。
一路秩父へと向かう・・・
秋風を浴びながら、小休止をしているのは正丸峠。
1.5Lの直列4気筒自然吸気エンジンから発せられるパワーは僅か131ps。Z33の半分以下だが、これが軽量なボディに絶妙にマッチしていて、最高のドライビング・エクスペリエンスを提供してくれる。
峠道に佇む姿はまさにスポーツカー。
見事な曲線を用いて描かれた美しいボディラインは、近年の国産車の中では群を抜いていると感じる。
やはり、オープンカーは屋根を開けた姿が最も美しくないといけないのだ。
お昼御飯を道の駅ちちぶで頂く。
10:00〜18:00という限られた時間の中でとにかくロードスターという車を知りたいが為に、そそくさと山菜うどんを食べて再出発を決める。
新秩父橋を渡り、秩父ミューズパークを経由し、R299→r71土坂峠へとルートを辿る。
r71土坂峠はかなりタイトなワインディング・ロード。
しかしそれでも、ロードスターは軽さを武器にヒラリ・ヒラリと木の葉のようにコーナーを抜けていく。
パワーが無いが故に、シフト操作をサボってはいけない。しっかりとブレーキを踏み、2速に落とし、徐々にアクセルを開けていく。この操作が綺麗に決まった瞬間が最高に楽しいのだ。これこそがロードスターの真髄なのだと感じさせてくれる瞬間だ。
そして、後ろからかなりのハイペースで迫るバイクに気付く。
左ウインカーを出し、道を譲る。さて、このロードスターでどこまで付いていけるか。
2速と3速を頻繁に使いながら、体を傾けてコーナーを抜けていくバイクの追走を始めると、195/50/R16のタイヤの限界はそう高くなく、すぐに鳴き始め、僅かなテールスライドと共にコーナーを立ち上がる。
「これは試乗車だ、やめておこう」我に返り、トンネルを抜けてロードスターを停める。
笑いながらロードスターを降り、シャッターを切る。
日本の1.5車線幅の峠道では、このくらいのボディサイズはとてもマッチする。
ロードスターは命をかけて果敢にコーナーを攻めて、タイムを削るような車ではない。
オープンスタイルに小気味よいエンジン音を響かせながら、天気の良い休日のワインディング・ロードを楽しむ車だ。
「そんなに急がず、景色や道を楽しもうじゃないか。」
そう諭されるようだ。
ここからはR299志賀坂峠で秩父へと戻る。
これまたタイトな、”秩父らしい”と言えるワインディング・ロードだ。
ところで、一部で評判の悪い電動パワー・ステアリング。
確かに意識してステアリングを切ると、かなり情報が希薄だ。
路面状況やGの変化に関わらず、ステアリングの重さが常に一定で不自然さすら感じる。
だがこれは個人的には小さな欠点だ。この欠点に目を瞑ることで得られる利点の方が大きいから、電動パワステを採用したのだろう。
逆に、直進安定性は電動パワステのお陰かどうかわからないが、とても良い。
ましてや、この軽いボディ、短いホイールベースから予想していたよりもずっと良く、高速道路での長距離移動も全く苦ではないだろう。
こうして帰路に就いた頃には、すっかりロードスターの虜になっていた・・・
あまりに走り過ぎ&事故渋滞にハマり、18:00を過ぎてしまったが、何一つ嫌な顔をせず迎えてくれた。
強引なセールスも一切なし。なるほど、これがマツダ流の販売戦略か。強引なセールスをされるより、楽しい思い出を作って帰った方が「もう一度来よう!」となる。少なくとも自分は。
少々のクルマ談義に花を咲かせ、アンケートと写真を撮影し、お礼を言ってディーラーを後にした。
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さて、改めて新型ロードスターという車を見てみましょう。
今回の新型ロードスターの最大の魅力は「原点回帰」と言えるでしょう。
初代NA型ロードスターは、イギリスで古くから流行っていた小型オープンスポーツカーを日本流にアレンジしたものだったが、壊れない・良く走る・格好良いと3拍子揃ったスポーツカーは世界中で大ヒットした。
それに続いたNB・NC型ロードスターも素晴らしい出来だったが、近年の重量化&高出力化の時代の流れに沿ったモデルとなった。
それに「待った!」をかけたのがこのND型ロードスターだ。
マツダのその判断はまさに英断としか言いようがない。スポーツカーにおいて、パワーダウンすると「退化」と捉えられることもしばしばあり、それを歴史ある名車ロードスターで行なうのはなかなか勇気のいる決断だ。
ダウンサイジングされた1.5L・直列4気筒自然吸気エンジンはスペック以上にパワーを感じさせる。
「爆発的な加速力」には到底及ばないものの、僅か1,010kgのボディを走らせるには丁度良い。少し演出過多のエキゾースト・サウンドも、ノーマルマフラーで乗りたい自分は気に入った。
そして、それに組み合わされる6MTのシフトフィールはホンダのように、軽くスコスコと決まる。まあ、個人的にシフトフィールなんてどうでも良くて、MTの最大の魅力は流体クラッチを介さないことによるアクセルフィールにあるのだが・・・
それに何より、「フロント・ミッドシップエンジン+後輪駆動」というレイアウトはやはり素晴らしいパッケージングだと改めて気付かされる。
全てのパーツ、そしてドライバーが正しい位置に配置されており、完璧な重量配分が織りなすコーナリングはまさに「気持ち良い〜」ってやつだ。
これこそがマツダの言いたい「人馬一体」なのだろうか。
それから、いくらスポーツカーでも無視出来ない「燃費」だが、今回の秩父ツーリングで220kmほど走り、総合燃費は16.5km/L。
カタログ燃費には及ばなかったものの、秩父への行き帰り以外はほとんどワインディング・ロードを走っていたことを考えればかなり優秀な燃費だ。あくまで予想だが、高速道路での燃費は20km/L位いくのではないだろうか。
まとめると、走行性能はサーキットでタイムを出すのが目的でなければ申し分無く、デザインも素晴らしい。おまけに燃費も良くて経済的。
ルーフを開け、陽の光と風を感じながら軽快に駆け抜ける爽快感はロードスターならではだ。
そして何より、新車を無料で1日中貸してくれるという超太っ腹なキャンペーンを企画してくれた関東マツダには感謝したい。
皆様もご体験あれ!