【試乗記】シビック TYPE R(FD2)
新型シビック TYPE Rが発売された今、なぜFD2の試乗記を書くのか深い謎に包まれていますが、新型ロードスターの試乗記を書いたので、それに伴って以前(2014年9月)に乗った時のメモ書きを元に、シビック TYPE Rの試乗記も書いてみようか、と思った次第です(汗)
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友人3人を乗せ、街中をのんびりとクルージングしながら秩父へ到着。
乗り出してすぐにわかることは、「車高調でも組んであるのか?」と思うほどハードな乗り心地。
路面のわずかな凹凸で跳ねる跳ねる・・・(汗)
おまけに最小回転半径5.9mと、レクサス LS(5.7m)以上に小回りが効かないので、ボディサイズからは想像もつかないほど取り回しに困る(笑)
BMW M3も5.9mですが、慣れない私にはコンビニから出るのも一苦労でしたよ(汗)
R299に入り、少しペースアップ。と言っても、眠りについている同乗者もいるのでほどほどに。
「うおっ!こんな曲がるのか!」
ハンドルを切ると、まるでジェットコースターのごとくノーズがコーナーへ即座に突入する。
そこでアクセルオンをくれて上げれば、言葉通り「オン・ザ・レール」で引っ張られて脱出する。
FFは嫌いなのだが、TYPE Rのノーズの軽さを体験してしまうとFFにも魅力を感じてしまうのが正直な感想。
このコーナリング性能は、今まで乗ったクルマの中ではダントツで、欧州ハイパフォーマンスカーにも匹敵するのではないだろうか。
私はクーペ・スタイルが好きだが、FD2のルックスは嫌いではない。
というのも、歴代シビック TYPE R(NSX-Rは除く)のハッチバックスタイルは苦手だし、DC5はリアフェンダーの処理があまり好みではないので、このFD2は唯一のセダンボディということもあり一番好きだ。
ボンネットから伸びやかに続くAピラーのラインも美しい。
うーむ、セダンも悪くないねぇ〜
ただ一つ気になったのは、FD2に限ったことでは無いのだが、その美しいAピラーの弊害か、途中から縦に伸びる支柱(?)がコーナーで視界を邪魔し、特に右コーナーで対向車を認識するのに時間がかかる。
これはスポーツカーとして一番乗りにくさを感じた部分だった。
フロントにはブレンボ(住友製)の4ポット・キャリパーが装着される。
特段効きが良いとは感じないが、ペダルタッチはホンダらしい、カッチリとしたフィーリングで好み。
インテリアは、正直言ってあと一歩。
DC5まではRECAROのセミバケットシートが標準装備だったのが、FD2からはホンダのTYPE R用シートとなった。
座面位置も少々高く、リクライニングもダイヤル式からレバー式に変更となった。
これは市販車として正しい進化だと思うし、ホールド性もなかなか良い。
しかしながら、元がオジサン’s セダンなのだから仕方が無いが、中途半端なスポーティさが気になる。
ただ、上部に設置されたデジタル・スピードメーターと、シフトアップ・インジケーターはとても見やすく、サーキットユース前提で設計されたことがよくわかる。
何よりも、通常5人乗りのシビックを4人乗りに定員変更されている点は一番理解に苦しむ。
後部座席に人を乗せてサーキットを走ることなんて無いんだし、ホールド性なんて必要ない。
それよりも、5人家族のお父さんの為にも5人乗りを維持するべきではないだろうか。
これは最新型のFK2も4人なので、本当に理解出来ない。Lexus IS-Fも同様。
只者ではないと感じさせる8,400rpmからのレッドゾーンが刻まれたせっかくのタコメーターも、質感はイマイチでちょっとオモチャっぽい。
さて、本題のエンジンの話。
型式 : K20A
種別 : 水冷直列4気筒DOHC自然吸気エンジン
排気量 : 1,998cc
ボア×ストローク : 86.0mm×86.0mm(スクエア・エンジン)
圧縮比 : 11.7 (DC5:11.5)
最高出力 : 225PS/8,000rpm (DC5 : 220PS/8,000rpm)
最大トルク : 215N·m/6,100rpm (DC5 : 206N·m/7,000rpm)
i-VTECで武装したK20Aは、リッター当たり112.5PSを実現し、レブリミット8,400rpmでのピストンスピードは24m/sを超える。
同じK20Aを積むインテグラ TypeR(DC5)だが、そこからさらに単管ショートインテークマニホールドのストレート化、ヘッドポート表面の平滑化により吸気効率を高めるとともに、エキゾーストマニホールドの集合部鋭角化、デュアルエキゾーストパイプのストレート化などによって排気効率も向上し、さらなるスペック向上を果たしている。
シフトダウンし、ひとたびオルガン式のアクセルペダルを踏み込めば、レーシングカーのような甲高いサウンドと共にあっという間にレッドゾーン。
このエンジン、モーターの如くどこまでも回ってしまいそうです(汗)
一方で、最大トルクの発生回転数がDC5の7,000rpmから6,100rpmへと下がったことで、街中での扱いやすさも兼ね備えている点は実に素晴らしい。
世界最高水準の自然吸気エンジンを、ホンダ・チューニングの6MTで操る。
トランスミッションはDC5比で1〜3速はローレシオ化、4〜6速はハイレシオ化されている。
完全にサーキットに焦点を合わせたギア比であり、街中を転がしているとシフトアップの忙しいこと(笑)
おまけに高速道路100km/h巡航ではタコメーターは3,000rpmを指しており、なかなかやかましいのでロングドライブはハードな足回り含め少し疲れそう。
シフトストロークは意外と長く、スコッ入る感じ。個人的にはもう少し短く、カチッと決まる方がスポーティだし好みではある。
とにかく、約400km乗ってみて感じたことは、このクルマの最大の魅力は世界最高のパフォーマンスと扱いやすさを兼ね備えた直列4気筒自然吸気エンジン、そして圧倒的な旋回性能だと感じた。
難点もいくつか挙げたが、このクルマの魅力にかかればそれらの欠点は大海におけるさざ波のようなもの。
ひとたび走り出せば、そんなことはどうでも良くなってしまうほど人を虜にするパフォーマンスを持っているのだ。
自然吸気エンジン+FFという組み合わせでは、世界最高峰ではないだろうか?
しかもそれが300万円足らずで買えてしまうのだから、バーゲンプライスも良いとこだ(笑)
残念なのは、今後このようなクルマが生まれる兆しが見えないという点だ。
現行型シビック TYPE Rもターボ化され、世界中の自動車メーカーがダウンサイジングターボの流れになっている。
そういう中では、高回転型自然吸気エンジンは数年後には貴重な存在となっていることは間違いないだろうし、FD2は日本のホンダのエンジニアが生み出したTYPE Rシリーズの実質ファイナル・エディションだ。
中古市場にも程度の良いタマがたくさんあり値段もこなれてきた今、一度乗ってみるのも悪くはないのではないだろうか。
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というわけで、ワインディング・ロードをメインに高速道路・市街地と約400km走った上での試乗記でした。
試乗記でもべた褒めしている通り、とても魅力的なクルマに違いはありませんが、残念ながら私の購入候補には入りません。
やはり後輪駆動の路面を蹴っ飛ばしてコーナーを抜ける感覚が好きというのもありますが、サーキットはほとんど走らず、ロングツーリングがメインの使い方では何より勿体無いですし、少々扱いづらさを感じる場面もあります・・・
それに、シャイなので大きなウイングの付いたクルマは恥ずかしくて乗れないんですよ(笑)