北海道ツーリング2024 2日目

AM4時。目覚ましをかけなくても、自然と目が覚めた。

陸地が近くなったようで、iPhoneに電波が入りいくつかのメッセージやメールを受信した。
そのまま雨雲レーダーを開くと、小樽は雨のようだ。
午後になれば晴れる予報のようなので、”下船即ワイパー”は仕方ない。

荷物をまとめ、アナウンスを聞いてから車両甲板へと降りた。

船を降りてルーフスイッチ…ではなくワイパーレバーを下ろして下船即ワイパーをキメる。
薄暗く水たまりの出来た静かな小樽の街を移動し、コンビニに立ち寄る。

雨脚は結構強く、ここではお茶を購入するだけとなった。

さて、少し北上すれば雨雲もかかっていない模様。
なので目的地をとりあえず適当に留萌のあたりに設定し、R5→R337→R231と繋いでひたすら北上することとし、走り出した。

今回の北海道ツーリングでは、3年ぶりということもあり基本的には過去の旅をトレースとしつつ、2-3割のバランスで未訪の地を訪れるようにしようとなんとなく考えています。
となると、まぁほとんど代わり映えのしない旅になるのですが、そもそも好きな風景や道に会いに行く旅なので、それで良し。

雨の石狩の街を抜けて、いつもの望来のパーキング。

ここに着く頃には、既に雨は止んでいた。
なんとなく自分の中で、このあたりからオロロンラインの旅が始まるのだ。

そのままR231で海沿いをしばらく走り、雄冬岬先のパーキングで小休止。

以前は立ち寄った雄冬岬展望台も、今日は冴えない景色だろうからパス。
ここで乾いた幌を開け、いよいよ待望の北海道オープンドライブの開始。
“涼しい”というのは本当に素晴らしい。久しぶりのオープンである。

オープンドライブの喜びを噛み締めながら、増毛へ。

いつも立ち寄る国道沿いのセイコーマート増毛南暑寒町店で朝食。
安定の美味しさを誇るホットシェフのおにぎりをいただく。

もはや今さら言うまでもないことだが、セイコーマートの存在は北海道ツーリングにおいてかなり心強く、そして旅の非日常感をより一層強めてくれる。

増毛の次の街、留萌では旧・留萌駅に立ち寄った。

ご存知の通り、留萌本線は2023年3月31日の最終運行を以って、石狩沼田駅 – 留萌駅間は廃止となった。
それに伴い、ここ旧・留萌駅も役目を終えることとなった。

人口減少と東京一極集中が社会問題として提起される中、北海道をはじめとする地方の鉄道や街は衰退の一途である。
鉄道が開通し栄えた街が、鉄道が失われ、衰退に拍車をかける…
各地を旅をしていても、それらを痛感するばかりである。
かつて泊まった宿や訪れた食事処が、再訪すると閉業していることは珍しくない。
こうして日本各地を便利に自由に旅出来るのも、もはや当たり前ではないのかもしれない。

厳しい現実に打つ手もなく、悲しい気持ちのまま旅を再開した。

このまま海沿いをいつも通り北上しても良いのだが、少し趣向を変え、小平からd126で内陸へと向かう。
点在する民家のある区間を抜けると小平ダムが現れ、小平ダムを超えるとd742へとスイッチ。
当然の如く交通量はゼロで、大自然を抜けるワインディング・ロードである。

その先でぶつかるR239で左折し、再び日本海方面へ。
R239も序盤は山中を走るワインディング・ロード。とはいえ、鹿の飛び出しが恐いので程々に。

少し走ると山奥から農村地に出るのだが、この頃には再び雨脚が強まっていた。
しばらくは耐えていたものの、さすがに耐えられる水量ではなくなったため、脇道にそれて無念のルーフダウン。
びしょ濡れになった車内を軽くタオルで拭き、再出発。

日本海と再会し少し北上すると、羽幌という街が現れる。

羽幌といえば甘エビが有名なのだが、いつもタイミングやら何やらで素通りしてしまい、一度も食したことがない。
いつもの旅に少しばかりの”新しさ”を取り入れるべく、道の駅 ほっと♡はぼろ(※これが正式名称)に立ち寄った。

そして歩いてすぐの、おろろん食堂へ。

当然、羽幌名産の甘エビ丼をオーダー。
綺麗に盛り付けられた甘エビは大きく、そして名前の通り甘くとても美味。
おまけにカレイの唐揚げまで付いてきて、大満足の昼食となった。

そして食事を終えて店を出ると、雨上がりの抜けるような青空が広がっていた。

いいね、いい感じだ。
雨上がりの晴れ渡った青空に、生存権が肌で感じられる気温と湿度、これこそ”あるべき気候”ってやつだ。

羽幌から先は海沿いをトレース。
休日ということもあるが、海沿いの国道は基本的に一定の交通量がある道だ。この道はひたすら続く日本海を眺めながら、次々と現れる丘陵をのんびりと越えていくのが心地よい。
オープンドライブに青空も加わり、まさしく最高の気分のまま道の駅 えんべつ富士見へ。

富士見という名前の通り、多少の雲はかかっているものの利尻島の姿がはっきりと確認出来た。
休日で賑わっていたのと、景色が見られて満足したので、道の駅の”本体”には立ち寄らずにリスタート。

ここから先は国道を離れ、海沿いを走る。

気温20℃。

交通量の無いこの場所は、エンジンを止めれば人工的な音は消え去り、心地よい風が吹く。
そうだ。このために僕はオープンカーに乗っているんだった・・・

しばらく黄昏て海を眺めていた。

そのまま少し走れば天塩町、そしていよいよサロベツ原野というわけだが、その前に天塩川の河口へと立ち寄った。

ここまで来ると誰もが道道106号線へと急ぎ、ここを訪れる人はほとんどいないのだが、天塩川河口にある公園は綺麗に整備されており気持ちが良い公園である。

天塩川は256kmの距離があり、これは北海道内2番目、日本では4番目に長い川だそう。
東西を山脈に狭められていることから南北に細長く流れているのが特徴で、特に河口付近が変わった線形をしている。
滝上町にある天塩岳を源流として北上してきた天塩川は、幌延の手前で西進し日本海へと流れ込むかと思いきや、日本海直前で向きを変えて今度は南下して海へと流れる。
これは、日本海側を海岸砂丘に遮られているためだそうで、そしてその海岸砂丘の上をまさに道道106号線が通っているのだ。

さて、道道106号線へと向かおう。

d106の入り口で出迎えてくれるオトンルイ風力発電所。
高さ99m、28基の風力発電が一列に並ぶ光景は遥か遠くからでも視認でき、最北の象徴的な風景の一つとして有名である。

実はリプレース計画に伴い現存の風力発電は2023年4月から解体が予定されていたので、もう見る機会はないかと思っていたのだが、2027年3月まで計画延期になったことで今年も見ることができた。
発電事業として設置されている故仕方がないが、これだけ象徴的な風景になっていると無くなると寂しく感じるのも事実。
一方、近づくとものすごい轟音(異音?)をたてており、少し心配にもなった次第だ。

そしてオトンルイ風力発電所のすぐ先では、2023年5月から運転を開始した浜里ウインドファームが新たな風景として加わっていた。
見栄えはオトンルイの方がずっと良いけど、環境対策やエネルギー効率を考えた結果なのだろう。

原野を貫く一本の道という風景に、画竜点睛のごとく利尻島が加わり、サロベツの風景が完成する。

原野や湿原を貫く道や海沿いの道は多々あるけれど、ここは唯一無二の道だと感じる。
海に浮かぶ利尻島を眺めながら、何もない原野をひたすら真っ直ぐ走るのは本当に爽快。

いつもと同じ風景、同じ道だが、やはりここだけは外せない。

サロベツ原野は車で走るだけではもったいないので、サロベツ湿原センターへ立ち寄る。

ここは整備された木道を歩くことができ、1周30-40分ほど。

360度視界に広がる湿原、遠くに見える利尻島、まるで世界が自分1人になったかのよう・・・
そしてなんといっても、歩いても汗をかかない素晴らしさ!
時折優しく吹くそよ風を全身で感じ、最高に気持ち良い湿原ウォークとなった。

その後は利尻島へ最も近づく夕来へと立ち寄った。

涼しいとはいえ9月中旬の北海道なのに、半袖でも十分すぎる気候。
風で揺れるすすきだけが、秋の訪れを感じさせた。

さて、今日の宿は稚内に抑えた。
今から宗谷岬まで行くと日没を迎えてしまうので、ノシャップ岬を反時計回りで巡ることにした。

というわけで、夕日が丘パーキング。

見えるのは海と利尻島、点在する民家だけという風景ではあるのだが、北海道の雄大な自然を強く感じられる場所。
そして何より、夕日の時間帯は本当に美しいのだ。

稚内の街を抜けて、ノシャップ岬へ。

ノシャップ岬灯台は北海道一の高さを誇る灯台。
もともとは現在自衛隊のレーダーサイトのある丘の上にあったそうなのだが、移転して現在の場所になったため、このような高さになったのだとか。
まぁ、紅白の色合いも含めてあまり格好良くは無いのだが・・・

お土産屋はすでに閉まっており、ノシャップ岬では特にすることもなかった。

ウニ丼の店が数店あったり、お土産屋や水族館があることで観光客が多い割に駐車場は少ないノシャップ岬。
なんとなく毎回立ち寄ってはいるのだが、わざわざ来なくても良いかもなぁ…。
そんなわけで写真だけ数枚撮って、足早に去った。

さて、そろそろ日没だ。
日没は大好きなサロベツで迎えよう・・・

視界全てが橙色に輝く道道106号線をひた走り、カメラマンが集うダイヤモンド富士スポットをパスして、人気の無い夕来のあたりで車を停めた。

夕日は海に光の道を描き、今日見た青空は美しい色彩のグラデーションに染まっていた。

3年ぶりの北海道、3年ぶりのサロベツの夕暮れ。
記憶の中にある美しい風景が、いまこの瞬間、目の前に広がっている。
私が求めていた風景は、変わらずにそこにあった。

刻一刻と色彩が変わり、利尻島とボクスターはシルエットのみとなった。

この日は日没を迎えても、半袖1枚で問題なかった。

波の音だけが遠くに聴こえる静寂の中、太陽は利尻島の山麓へと消えていった。
そして、1日が終わっていく。

飛び出す鹿に神経を尖らせながら、稚内の宿へ移動した。

(続く)

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