酷暑の九州ツーリング 2021 3日目
雲仙で迎える九州ツーリングの3日目。
ところどころで青空が見えるものの、基本は雲優勢な空模様。
しかしここは多少標高が高いこともあり幾分マシな気温だ…
まずは雲仙地獄を散策。
前回の九州ツーリングでは雲仙付近のホテルに宿泊していたものの、ここ”地獄”までは来なかったので取りこぼしている。
取りこぼしというよりも、複数台で訪れるような場所でも無いと思っていたのもあるが…
で、雲仙地獄は宿から歩いて10分くらいなので車もそのままに歩くことにしたのだが、歩いても歩いても全くその気配が無い。
おかしいと思ってGoogle Mapsを開いてみると、全く真逆に向かって歩いていた・・・
普段こんなミスはしないのに、歩いた労力よりもこんな低レベルなミスをした自分が心配になった。
暑さでやられてしまったのだろうか…それとも、考えてみれば久々の一人旅なので勘所が鈍っているのかもしれないな…
正しい方向に歩けば硫黄の香りが漂ってきて、本当にすぐ到着。
どう見ても明らかにこっちのほうが”雰囲気”があるわけで間違いようもないのだが、本当に思考が停止していたんだな…全く。
ところで全く知らなかったのだが、小浜温泉と雲仙温泉と島原温泉は同じマグマだまりが源とのこと。
しかしながら、マグマだまりからの距離によって火山ガスの成分が変化するため、それぞれ泉質も色も異なるのだとか。
最もマグマだまりに近い小浜温泉の源泉温度は105℃(!)で日本一。
うーむ、自然とは面白い…
ところで、島原温泉はフェリーターミナルの足湯しか浸かっていないし、小浜温泉は足すら浸かったことが無い。
また来る必要がありそうだ・・・
で、地獄自体はよくある”地獄的風景”なので特別説明することもない。
もう少し遅い時間になれば温泉卵の販売所なども営業を開始してそれっぽくなるんだろうが、数人が歩いている程度だった。
とはいえ、きちんと遊歩道が整備されていてとても歩きやすく、全て歩くと結構なボリュームになるのでそれなりに楽しめる観光地だろう。
ボクは蒸し暑さが嫌になり、上の方にある大叫喚地獄や邪見地獄には行かなかった。
わざわざ上まで頑張って登らなくてもこんな見どころ(?)も・・・
観光客がほとんどいない中、”ウンゼンネコ”がたくさんくつろいでいた。
地熱の影響で冬は地面が暖かく、おまけに観光客が購入した温泉卵のおこぼれを食べているらしく、なかなか良い環境なのかもしれない。
もちろん飼い猫ではなく、みんな野良猫らしい。
さて、そろそろ出発する。
エンジンに火を入れ、暖気もままならぬ状態で向かったのはすぐ近くにある「雲仙仁田峠循環道路」
あゝ、ここは素晴らしいワインディング・ロードだ。
以前も走ったのだが、わずか100円(目安)の環境維持のための協力金を支払うだけで、1.5~1.8車線の完全一方通行の山岳ワインディングを楽しめる。
雲仙普賢岳や島原市街から熊本市街までを望む眺望も素晴らしく、おまけにわずか100円を支払っているに過ぎないのにも関わらず、そのお陰か落石や落枝一つ無く、舗装状態も極めて良い。
距離自体は決して長くないものの、短い距離に濃密なドライビングプレジャーが詰め込まれている。
今日の普賢岳は生憎雲にやや隠れているが、それでも最高の気分に浸っていた。
先客も去り、一人の時間・・・
前回来たときは島原から熊本のフェリーに乗船したっけ・・・
今回は島原はスルーだが、結局島原の街も何一つ知りやしない。
もっと時間をかけて濃密な時を過ごす価値のある場所だと思う。
この先に雲仙ロープウェイもあるのだが、雲がかかっているし乗ってもそこまで眺望は期待出来ないので、駐車場で小作戦会議を済ませて下山した。
雲仙までは昨日はr128で登ってきたので、今回はR57で小浜温泉方面へ下る。
そこからは淡々と海沿いドライブ。
小浜を抜けて少し行くと、左にr201へと分岐する道が現れる。
興味本位でステアリングを切ると、これがまた面白い道なのだ。
一気にローカルな道へと姿を変え、1.2~1.5車線幅くらいの狭路が続く。
時折、このような緑のトンネルや、本当に1車線幅のトンネルが現れる。
ローカルな道だと言われたらそれまでなのだが、でも何か違和感を感じさせる風景・・・
あとになって気になって調べてみると、なんとここは元々「小浜鉄道」という鉄道が通っていた、まさにその場所なのだ!
廃線後、風景はそのままに線路を道として整備したため、まるで鉄道の前面展望のような風景が広がる。
だからこそ単線用のトンネルなので離合不可のトンネルが現れたり、こんな切り通しの緑のトンネルが現れるわけだ。
とはいえ”列車運行管理システム”があるわけではなく自動車は対面通行なので、決して走りやすいわけではないのだが、それでも楽しい道だった。
が、楽しいのもここまで。
R251は極普通の幹線道路だが、ボクはこういう道をトラフィックに混ざって走るのもそこまで嫌いではない。
というのも、その地域の生活感というか、その土地独特の雰囲気を感じられるからだ。
そしてそのまま長崎市街を抜ける。
路面電車が通っている街を運転するのはどうも好きじゃない(汗)
とはいえ、問題はそこからだった・・・
そのまま調子に乗ってR499で長崎半島に向かったところ、これが大失敗。
なんとなく”半島”と聞けば空いているイメージがあったので、正直言って佐田岬メロディーラインのようなものをイメージしていたのだが、交通量も大変に多い幹線道路。
先端を目指して走っていたので今さら引き返すことも出来ず、勝手に期待値を上げていただけに落差が激しく、我慢のドライブとなった…
まぁ、長崎市街にこれだけ近いのだから考えてみりゃ当たり前なのだが、いやいや半島恐るべし。
こんな間抜けなルーティングをしてしまうのも、酷暑の中オープンで走って頭がやられてしまったのだろうか…(n回目)
何はともあれ、権現山展望公園に到着。
さっきまでの交通量が嘘のようで、展望台には誰一人居なかった。
ここまでわざわざ来たのは、なんとなく半島って言われると巡らずにはいられない性のようなものと、軍艦島を遠目からでも見てみたかったから。
正式名称は「端島」
明治から昭和にかけて炭鉱で栄えた島で、最盛期にはこの小さな島に5千人ほどが住んでいたらしい。
これだけ遠目からみても、そのシルエットは明らかに人工物を感じさせる。
まさに”異様”とも言えるその光景が、廃墟好きを惹き付ける何かがある…
一度上陸してみたいものだが、長崎半島をR499でもう一度走るのは御免だ(苦笑)
さ、重い腰を上げて長崎半島を戻る。
この時点では東側のr34を走るほうが良いと思っていたが、進むのは西。
わずかな快走を求めてr34を走ってこんなところで時間を喰うよりも、さっさと来た道を戻ることにした。
でも意外や意外、復路のR499は思いの外あっさりと半島を走り終えた。
まあ、タイミングや天気、自分の気分や体調とかで、道の印象なんて簡単に変わるもんだ。
が、さすがに長崎市街を抜けるのはもう勘弁なのだが、そこに現れたのは「女神」だった。
その名も「女神大橋」は長崎半島から西彼杵(にしそのぎ)半島へとショートカットする形で繋がれている。
入り込んだ湾を跨ぐ形で設置されているため、自分にはとても効率的なショートカットで「まさしく女神だなワッハッハ」なんて思いながらわざわざ写真を撮った。
通行料はわずか100円。…なのだが、ETCは使えず自動精算機、つまり左ハンドルのボクスターではわざわざ降りねばならず、「この点は女神じゃないな…」などとくだらないことを思っていた。
さ、しばし我慢の走行が続いたが、ここからは快走再開。
R202で西彼杵半島の西側を北上し、畝刈(あぜかり)町から内陸を貫くr204を激走する。
決して景色が開けるわけではないが、誰も居ない山中をトラフィックに引っかからずに一気に縦走するというのは気持ちが良い。
r204の次は西彼杵広域農道(通称:西海オレンジロード)
ここはさらにスピードレンジも上がり景観も望め「やっぱ広域農道だな〜!」などと思いながら西彼杵半島の北端まで一気に走り抜けた。
西彼杵半島の北端にかかる2つの橋は、水色の「新西海橋」と赤色の「西海橋」
ここも実は以前から訪れたいと思っていた場所の一つ。
同じ場所に同じように使える橋が2つも並んで架かっている光景ってそんなに無いのではないだろうか?
それを眺めろと言わんばかりに、展望台も設置されていて1枚の写真に2つの橋を収めることが出来る。
こうしてみると面白い。歩いて行ける範囲に同じ目的の橋が2つ架かっている。
それに、橋のアーチ形状や色合いもそれぞれなんとも美しいでないか…
何かが感性を刺激する、そんな風景である。
しかも、それだけではない。
すぐ近くに見える圧倒的な高さを誇るこの3本の塔は「針尾送信所無線塔」だ。
なんと完成は1922年と100年近く経過しており、高さは3本とも全て132mを誇る。
1922年の完成から1954年に名古屋テレビ塔が完成するまで、日本一の高さを誇る建築物だったのだとか。
ちなみに、ここから太平洋戦争の真珠湾攻撃を意味する「ニイタカヤマノボレ」を発信したという説もあるが、それはどうやら違うらしい。
いずれにせよ、これだけの歴史のある建造物が現代まで保存され、こうして実際に見ると圧倒されることは間違いない。
ちなみに新西海橋は下側に歩道があり、渡ることが出来る。
せっかくなので中央まで渡り、改めて針尾送信所。
それから西海橋を写真に収めた。
そしてここの海流は「針尾瀬戸」と呼ばれ、日本三大急潮の一つとされている。
そのため流れがとても速く、時間帯によっては渦潮を見ることも出来るらしい。
残念ながら、私が訪れたタイミングは渦潮発生条件は満たしていなかったが、それでも流れの速さは感じることが出来た。
さて、西海橋を渡り、西九州道で再び平戸までワープ。
今日の宿は「平戸千里ヶ浜温泉 ホテル蘭風」
昨日に引き続き湯快リゾート系列なので1泊2食付きで8,250円なのだが、一人旅にしてはずいぶんと豪華な部屋だ…
残念ながら外は依然として高温多湿環境なのでバルコニーで黄昏ることは実現出来なかったものの、夕焼けに染まった空は素晴らしかった。
わざわざ平戸まで戻ってきてヨカッタ・・・
昨日に引き続きディナービュッフェをたらふく戴き(今日も昼食を食べ損ねた)、弱アルカリ性の上質な温泉に浸かる。
月明かりに照らされた目の前の海には、3隻の船が灯りをつけて停泊している。
遠くの山の稜線には風力発電の航空障害灯が白く点滅していて、空には幾多もの星が輝いている。
最高の1日の終わりだった。
走行距離:271km
4日目へ続く。