酷暑の九州ツーリング 2021 6日目
九州ツーリング6日目。実質的には最終日となる。
実は昨晩、温泉に浸かりながらいつ帰るかを考えていた。
今日からは世間は祝日となり、宿の価格も上昇し、なおかつ選択肢もかなり限られていた。
それに、”祝日税”を払ってもう1泊したところで、あまり天気もよくなさそうだし、そもそも天気が良くても1日中”全開”で走ることは困難を極める暑さ。
頭の中でなんとなく阿蘇や由布院に立ち寄ろうかと考えていたものの、それこそ祝日の阿蘇や由布院がどういう状況なのかは明白。
というわけで、潔く今日帰る決断を下した。
朝イチで電話し、既に予約していた帰りのフェリーの日付を今日に変更してもらった。
フェリーは今夜、新門司港発。
夜発とはいえ、今いるのは鹿児島県。一気に九州を縦断することになる。
宿で朝食をいただき、ルーフを開けてまずはr480を高千穂高原方面に駆け上がる。
誰一人いない山岳路を”涼しい”空気の中オープンで駆け抜けるのはサイコーだ。
路面はウェットだし天気も全く良くないのだが、「気温」というその一点で、本ツーリングの中では最も心地よい瞬間であったことを記しておく。
しかし、燃料残量が少なくなってきたな。航続可能距離が100kmを切っている。
霧島をめぐってえびの高原も走ってえびの市に降りてから入れようかと思ったが、明らかに持たないし精神衛生上良くないので、霧島のエネオスで急遽給油。山奥なのにEneKeyが使えて助かった。
その後は、今日の最大の目的である「新湯温泉 新燃荘」へ。
時折強い風が吹いていたが、幸い雨は降っておらずいざ入浴。
撮影禁止なので下の写真は鹿児島県公式の観光サイトから引用したもの。
硫化水素ガス中毒を防止するため、1回の入浴が最大15分にするよう注意書きが貼られている。
実際、これまで入浴した硫黄泉の中でもトップクラスに強烈な泉質だ。
ロケーションも素晴らしく、赤松林に囲まれた一軒宿で、大自然に囲まれ静かに入浴することが出来る。
これだけの泉質を誇るのは新燃岳のお陰なのだが、新燃岳の火山活動の状況によっては過去に休業を余儀なくされたこともある。
それにしても本当に素晴らしい湯だ。15分きっちり露天風呂に浸からせていただいた。
次回は出来ることなら宿泊しよう。
ちなみに、3日間くらいは硫黄の匂いが取れなかった。
その後はえびの高原方面に走る。
オープンで走り始めたものの、途中で豪雨に見舞われたためあえなくクローズ。
r1(通称:えびのスカイライン)でえびの市方面へ下ろうと考えていたのだが、どうやらこちらは火山活動の影響で通行止めの模様。
この周辺は素晴らしい温泉に囲まれているが、それはすなわち火山帯を意味している。
というわけでもう1本の道であるr30(通称:霧島バードライン)でえびの市へ下る。
えびの市街を見下ろす。
霧島は名前の通り曇っている日が多いらしく、実際に昨日宿に着いたときから今まで青空を見ていない。
それに風も強く、めまぐるしく雲が流れている。
でも、えびの市の方は陽が射していそうだ。
えびの市からはR221で人吉方面へ。
上の写真はえびのループ橋。
一気に標高を上げ、1本のトンネルで”矢岳越え”を果たし、人吉側でも再びループ橋で標高を下げる。
変わった線形の道路だ。
昨日あれだけ苦労して達成した矢岳越えだったが、今日は本当に一瞬で終了。
現代の建築技術とは素晴らしいものだ。
もちろん、その感動はローカルな道で巡ったからこそなのだが。
軽く矢岳越えを達成し、道の駅 人吉へ。
ここではお土産に人吉茶を仕入れた。
さて、ここからはR219を肥薩線の八代〜人吉間に沿って球磨川沿いを走り、八代から高速に乗る算段だった。
が・・・
あれ・・・?マジ???(汗)
もう少し調査してから走り出せと思うだろうしそれに関しては本当に御尤なのだが、正直これだけ大きな幹線道路である国道がまさか通れないとは思ってもいなかった。
とはいえ、通行止めと言われたらその場所まで行ってみたくなるのが道路好きの性なので、ひとまず向かってみた。
どうやら緊急車両や復興支援のための車両のみ通行出来るようだが、写真の通りガードレールが無かったり1車線になっていたりと、まだまだ復旧は遠いように感じた。
ご存知の方も多いだろうが、ここも2020年7月の「令和2年7月豪雨」によって被災した。
人吉の街が水没した光景や、肥薩線の駅や橋梁が流されたのはニュースでも報道され、まだ記憶に新しいのではないだろうか。
それから1年以上、現在まで通行止めが続いているのだ。
通行止め地点の目の前にあるのは「くま村湯の駅」という土産屋のようだが、完全に1階部分が破壊されていた。
つまりこの道路の高さ以上まで、隣を流れる球磨川の水位が上がってきたことを意味する。
ここに来るまでも、破壊された民家などが数多く視界に入ってきた。
真新しい仮設住宅も建ち並び、その被害の大きさを改めて感じた。
私には一刻も早い復興をただただ祈ることしか出来ないので、この後に熊本県に気持ちばかりの寄付をさせていただいた。
R219を引き返し、人吉駅。
鉄道でも来たことはあるが降りたことはない。
もう少し駅の中を見学しようかと思っていたが、駐車場も空いておらず賑わっていたので撤退した。
人吉ICから九州縦貫自動車道へ乗り、一気に小倉を目指して走る。
幾多ものトンネルを抜けて宮原SAで休憩&昼食。
SA内にある「食事処 三南」で、ちょっと贅沢に「あか牛贅沢御膳」とやらが気になり頼んでみた。
手前にはあか牛のステーキ、奥にはりんどうポークのハンバーグが乗っているのだが、これが期待を上回る美味しさ。
あか牛が美味しいのは当然として、聞いたことが無かったりんどうポークのハンバーグが味付けも含めて非常に美味しい。
SAの昼食にも関わらず大満足だった。
その後も引き続き淡々と高速を北に向かって走る。
福岡に近づくに連れて増えていく交通量や、”北九州ナンバー”のミニバンのアレな走りに辟易しつつも、小倉東ICへ到着。
この時点で17時頃。
出航までまだまだ時間はあるのだが、溜まった洗濯物をコインランドリーで洗いつつ、その間にボクスターを洗ったりなどして、”旅の締めくくり”に入っていた。
しかし、九州は北海道に比べて車の汚れ具合が少なく、イマイチだな(何が?)。
自分の激走具合が足りないのか?
洗濯物も洗って車も洗って満足なのだが、猛暑の中で洗車したことで若干熱中症気味。
とりあえず夕食をと思い、九州発祥のファミレス「ジョイフル」に入店したは良いものの、あまり食欲もわかずにうどんを食べるにとどめた。
しかしここでたっぷり休憩したお陰で、なんとか復活。
そこそこ良い時間にもなったので、新門司港へ向かう。
そう、ボクを連れて行ってくれるのは、2021年7月1日に就航してまだ1ヶ月も経っていない新航路「東京九州フェリー」だ。
プレスが発表されてから今か今かと就航の時を待ち、出来る限り早いタイミングで乗りたいと思っていた。
それも今回、九州を目指した目的の一つなのだ。
新門司港を23:55に出港し、20:45に横須賀港へ入港する。
約21時間の船旅だが、今まで東京から九州への直通便は無かっただけに注目度は高い。
そして何より、運航するのはいつもお世話になっている新日本海フェリーのあるSHKグループだ。
真新しいフェリーターミナルが新航路であることをひしひしと感じさせる。
それにしても、新門司港は他にもフェリーターミナルがあるものの、それぞれ離れた場所にあるため、ここには東京九州フェリーだけのターミナルになっている。
そのため、苫小牧港のような賑やかさは一切なく、東京九州フェリーに乗る乗客だけの静かなターミナルだ。
23時頃、乗船。
例によって車高短乗船なのだが、なぜか新日本海フェリーと違って乗用車よりも早く乗船することが出来た。
別に純正車高なので通常通り乗っても擦ることはほぼ100%無いだろうが・・・
23:45、定刻よりも10分早く離岸した。
きっと乗客も少なく早めに搭乗が終わったのだろう。
当然だが、船内は非常に綺麗で、フロア構成は新日本海フェリーの新造船である「らべんだあ/あざれあ」を踏襲したものだ。
もちろん、新日本海フェリー名物(?)の露天風呂も健在。ありがたいありがたい…
しかし、エントランスにエレベーターが付いていたりと、進化点も見逃せない。
基本的にフェリーのメイン顧客は物流を支える方々なので、我々のような一般乗客も乗せてくれるだけでもありがたいのだが、それだけでなく、一般乗客が過ごしやすいための工夫が随所に見られ、本当にありがたい限り。
東京九州フェリーでももちろん、御船印を購入。なんと船長のサイン入りらしい。
さて、南の方では熱帯低気圧があり、揺れが予想されそうだな・・・
実際のところは、出港後は露天風呂に浸かり就寝したので、朝までぐっすり眠り起きることは無かった。
なので、多分そこまで大きくは揺れなかったんだと思う。
というわけで7日目となる7月23日。
その後も静かな夏の日本海に比べたら動揺はあるものの、まあ全然想定の範囲内。
想定の範囲内と言っておきながら、三半規管の弱い(強い?)ボクはすっかり酔ってしまったな…
おかげで東京九州フェリーのレストランを満喫したかったのに、すっかり太平洋に敗北して叶わなかった…
19時頃には、すでに三浦半島の先端に差し掛かっていた。
随分速いな・・・
とはいえ、東京湾は航行速度制限があるため、すぐそこに見える横須賀だが着岸まではあと1時間45分ある。
というわけでダラダラ船内で過ごし、久々にデッキに出て三浦半島の夕暮れ。
横須賀で軽く夕食を食べて帰路に就こうと思ってデッキでiPhoneをいじって調べたものの、
「そういや20時までしかやってないじゃん・・・(泣)」
仕方ないので、そのまま帰るとするか。
えーっとここから自宅までは・・・
「あ゛・・・」
そう、この日はTOKYO 2020の開会式なのだ。
しかも、20:00-23:00ってもろ被りやん(泣)
こんなところに帰宅を1日早めた弊害が出るとは全くの想定外(想定しておけ)だった。
しかし、東京オリンピックの開会式を洋上で迎えるとはな・・・
どうすることもできないので、大人しく諦め、1,000円上乗せされた高級な首都高でなんとか帰宅した。
この日だからなのか高級だからなのか、首都高はすっかり空いていて、快適なナイトドライブだった。
6泊7日、2,876kmの旅でした。
何よりも暑さに苦しめられた九州ツーリングではありましたが、自分の中でなんとなく思い浮かべていた目的の多くは達成出来ました。
九州は北海道の広いエリアと違い街が多く規模も大きいため、どこに行っても快走!というわけにはいきません。
しかしそれ故に、それらのローカルな街を巡ったり、その街の歴史を知る、まさにグランド・ツーリング的な楽しさがあるわけです。
そして、昨年は直前の豪雨で断念した九州行きでしたが、1年経った今でもその爪痕は深く残っていました。
それに加えて新たな自然災害も発生していたりと、九州は本当に自然災害の多い地域です。
もちろんツーリングで訪れる上でも、天候には細心の注意を払わないといけません。
自然災害はどうすることも出来ず、いつの間にか景色がまるっきり変わっていたりもします。
今見ているその瞬間の風景は、永遠のものではないのです。
終。